文部科学省 科学研究費補助金 学術変革領域研究(B

構造不規則系のレオロジー:

アナンケオン動力学の確立


研究期間:令和4年度 〜 令和6年度

領域概要

素材産業への新材料発見,既存材料の高機能化といった要求はより先鋭化しており,既存の材料にはない複雑な構造を持つ材料の開発が求められています。液体や非晶質を代表とする原子・分子が不規則に並んだ『構造不規則系』材料の利用は,現代における新機能材開発戦略の一つであり、図に示すように幅広いスケールで多岐にわたる不規則系材料が存在します。不規則系材料の高性能・高機能化・制御を実現するために,非晶質であることに起因する柔らかさや流れ易さといった特異な力学応答,いわゆる,レオロジー特性を明らかとし,その制御を許す,構造不規則系の科学の確立が求められています。本領域は,構造不規則系の動的素励起,『アナンケオン』とそれらの相互作用によるアナンケオン動力学を打ち立て,従来の「不規則構造の静的配置に立脚した物性予測」から「不規則構造の動的挙動に立脚したレオロジー特性予測」へと構造不規則性の科学パラダイムの転換を目標とします。


お知らせ

2022年度

5/24  第1回総括会議(キックオフミーティング)を実施しました。

6/8 第2回総括会議(計画研究A1班概要発表)を実施しました。

6/15 第3回総括会議(計画研究A2班概要発表)を実施しました。

6/24 第4回総括会議(計画研究A3班概要発表)を実施しました。

6/24  第1回(A1 – A2班連携打ち合わせ)を実施しました。

6/29 第5回総括会議(計画研究A1班進捗報告)を実施しました。

7/8   第6回総括会議(計画研究A2班進捗報告)を実施しました。

7/15  第2回(A1 – A2班連携打ち合わせ)を実施しました。

7/27  第3回(A1 – A2班連携打ち合わせ)を実施しました。

8/25  第7回総括会議 (進捗報告)を実施しました。

8/30  第4回(A1 – A2班連携打ち合わせ)を大分にて実施しました。

10/5 第8回総括会議(進捗報告)を実施しました。

10/26 第5回(A1 – A2班連携打ち合わせ)を実施しました。

11/2 第9回総括会議(進捗報告)を実施しました。

12/21 第10回総括会議(進捗報告)を実施しました。

1/26 第11回総括会議(進捗報告)を実施しました。

2/23 第12回総括会議(進捗報告)を品川で実施しました。

3/15 第1回(A1 – A3班連携打ち合わせ)を実施しました。

3/24 第13回総括会議(進捗報告)を大分で実施しました。

12.12/

2023年度

1/30 総括会議(進捗報告)を実施しました。

計画研究

 A01:荷電コロイド分散系のレオロジー:アナンケオン動力学と電気粘性

代表:岩下 拓哉(大分大学) 

ナノ・マイクロサイズの荷電コロイド粒子が溶媒中に分散した荷電コロイド分散系は,多彩な外場応答性をもつ機能性流体として知られています.高機能制御を実現するためには,流れ易さを特徴づける粘度の発現機構を明らかにする必要があります.少量の塩添加で,その粘度が4桁以上も劇的に低下する電気粘性レオロジーは,流れ易さと構造変化を結びつける絶好の特異現象でありますが,粒子配置の不規則性のために,レオロジー特性の動的構造変化の理解は十分ではありません.本研究では,計算機シミュレーション,レオロジー測定,小角X線・光散乱実験を融合し,流れ場中の荷電コロイド分散系の動的構造変化の素過程,すなわち,動的素励起(アナンケオン)を特定かつ発生条件を定量化し,ミクロな動的素励起からマクロな電気粘性レオロジー特性の接続原理の解明を目指します.さらに,荷電コロイド分散系の電気的特性と粘度の間に成り立つ関係を明らかにします.これらの研究を通して,荷電コロイド分散系のレオロジー特性の発現機構を解明し,本領域の大目的である構造不規則系のレオロジーにおけるアナンケオン動力学の確立に寄与します.

 A02金属ガラスのレオロジー:計算科学によるアナンケオン動力学の構築

代表:椎原 良典豊田工業大学) 

金属ガラスとは,金属元素が規則正しく整列していない金属材料のことを指し,その原子構造のランダムさから結晶性金属材料にはない新奇な材料機能を発現することが知られています.金属ガラスの産業利用を拡大するには,容易に割れないよう,金属のように伸びる性能(塑性能)を付加することが必要不可欠ですが,金属ガラスの塑性能発現機構は完全に理解されたとは言えません.力を受けて変形する中で,原子レベルの不可逆的な構造変化が集団的に励起されて互いに影響を及ぼし合うことがミクロレベルでの塑性能に繋がると考えられていますが,その原子レベルの励起子の素性は明らかになっていません.本研究では,この励起子をアナンケオンと呼称し,その正体を計算機シミュレーションを用いて解明することを目指します.さらには,アナンケオンの励起と相互作用のメカニズムを解明し,本領域の大目的であるところのガラスの普遍的変形理論,すなわち,アナンケオン動力学の構築に貢献します.

 A03金属ガラスのレオロジー:アナンケオン動力学と弾塑性変形

代表:足立 豊橋技術科学大学) 

不規則構造である金属ガラスは,従来の規則構造を持つ結晶材料には無い優れた力学特性を示すことが知られています.金属ガラスを産業利用へと展開するためには,延性を確保することが必要不可欠です.それを実現するためには,金属ガラスの塑性変形を支配している原子レベルの素励起(アナンケオン)が金属ガラス内のどのような構造によってもたらされているかを理解・制御し,塑性能を付加することが重要です.計画研究代表者らの近年の研究により,金属ガラスに対して加工を施すことによって延性を付加できることが明らかになりました.これは加工によってアナンケオンが生じやすい構造に変化していることを意味します.本研究では,アナンケオンの生じやすさを加工によって制御した金属ガラスの詳細な構造解析を行うことによって,アナンケオンが発生する原子構造の理解を目指します.これによって本領域の大目的であるアナンケオン動力学の構築に寄与します.

業績

問い合わせ先

anankeon.theory○gmail.com(○を@に変換下さい)